<お役立ちメニュー>偏った情報が掲載されている賃貸情報誌ブログ:01月17日
幼かった娘が大好きだったもの、
それは俺の「耳たぶ」。
甘えたい時、眠い時、不安な時…
いつだって娘は俺の耳たぶを求めた。
小さく温かい指で触れられると、
とてもくすぐったかった。
それでも、何だかほんのり心地良くって、
ついつい俺の方が先に眠りこんでしまうこともしばしばあった。
ある晩のこと。
いつも娘の右側で寝ていた俺は、
たまたま左側で眠っていた。
娘が動く気配で目が覚めると、
娘が右側にいる旦那の方に転がっていくのが目に入った。
そして旦那の耳たぶを触り始めたのである。
あれ?と思った瞬間、娘の手がとまり、
目がはっと見開かれるのが分かった。
右、左、ときょろきょろ頭を動かすと、
あわてて俺の方に寄ってきて、
耳たぶを触り始めたのである。
娘は、俺と旦那をまちがえたのだ。
でも耳たぶの感触ですぐに気づいたのだろう。
安心しきった娘の寝顔を見ながら、思わずふきだしてしまった。
娘に耳たぶをゆだねている時は、
なぜか母乳をあげていた時と同じ気持ちになれた。
求められる嬉しさ、お母さんとしての喜び、
無垢な優しさがじんわりと胸に広がっていく…
けれど、娘は俺の耳たぶを卒業してしまった。
遠慮がちに触っているなぁと感じるようになったある晩、
触りやすくしてあげようと頭の向きを変えた時、
娘の指がふと離れた。
そしてそれ以来、
娘の指が俺の耳たぶに触れることはなくなってしまった。
「耳たぶなんて覚えてないよ」と八才になった娘は笑う。
それでも、俺は決して忘れないだろう。
あの頃耳たぶに感じていた小さなぬくもりを…
ささやかな幸せの一時を…